親子でスマホ・ゲームお約束メーカー
インタビュー
2024年1月31日

子どもがゲーム・スマホの約束を破った時に有効なペナルティを徹底解説

子どもが約束を破ったからペナルティに基づいてゲーム機を没収よ!

「没収」は楽じゃが、リスクもあるゾイ!

もくじ
井上智介さん井上智介さんプロフィール
島根大学医学部を卒業後、大阪を中心に産業医や精神科医として活動中。産業医として毎月30社以上を訪問し、精神科医としてうつ病や依存症などの様々な疾患治療にあたる。「おおざっぱに(rough)笑って(laugh)生きよう」という思いから「ラフドクター」を名乗り、ブログやSNS、講演会、書籍などで情報発信をしている。

子どもがゲームやスマホの約束を破った場合のペナルティを設定している親御さんも多いと思います。しかし、そのペナルティは子どもにとって適切なものでしょうか?今回は、産業医・精神科医・健診医として活動中の井上智介先生に、子どもへの適切なペナルティ設定方法を聞いてきました。ペナルティの効果をいまいち感じられない親御さんや、これからペナルティを設定しようとしている親御さんは是非参考にしてみてください。

約束・ペナルティはどのように作ればよい?

まず、約束・ペナルティはどのように作ればいいのか尋ねました。

約束もペナルティも「子ども主体」で作らせたい

井上:約束・ペナルティは「子どもが主体的に作っていく」くらいでいいですね。一方的に親が作ったとしても、子どもは守るわけがないですから。子どもとしても「勝手にそっち(親)が決めたんでしょ」と言い訳ができてしまいます。
子ども主体で約束やペナルティを作るのは親側のエネルギー、時間、負担もかかるところです。ですが、子ども主体でなければ実効性のあるものにならないため、親側も覚悟の上でやらないといけないですね。
ただ子ども主体で作らせると、子どもの発想ですから「約束を破ったら謝る」といった、適当なペナルティになる可能性も高いです。

井上さんインタビュー風景

親が何を心配しているのかを子どもにきちんと伝える

――どうすれば子ども自身が適切な約束やペナルティを作ってくれるでしょうか。

井上:親が心配しいてることを、「きちんと」子どもに伝えましょう。ネットの使いすぎで生活リズムが乱れるとか、ネットを通じて犯罪に巻き込まれるとか、懸念事項を伝えながら、約束・ペナルティの落としどころを見つけていきたいですね。正直大変で、すっ飛ばしたくなりますが、そうすると結局、あとで親子がお互いの首を絞めてしまいます。

約束とペナルティは2つで1セット

――そもそも、ゲーム・スマホを子どもが使う約束を決める時、約束を破ったときのペナルティも一緒に決めた方が良いでしょうか。

井上:はい。約束とペナルティはセットで決めたいですね。約束を破ったからいきなり「1週間スマホ没収」というような、初めて聞くペナルティが出てくるのは子ども自身納得いかないでしょうし、親子お互いにとっていいことはないですよね。

ペナルティの効果は「年齢」ではない?

――ペナルティの効果は、何歳くらいまで効果があるものでしょうか。

井上:年齢というより、「ペナルティが明確に行われている環境に、子ども自身がどれだけ長い期間身を置いているか」が重要ですね。

――「実年齢」というより「ペナルティになじんだ年齢」が重要なのですね。

井上:はい。この点からも、ゲーム・スマホを買い与えるときに約束・ペナルティを用意しておきたいですね。また、これは「もう子どもが何歳だから、今さらペナルティを作っても意味がない」という意味ではなく、子どもが何歳であっても、今すぐ着手していかなくてはいけない、ということです。

約束・ペナルティを作るにおいて必要な「第ゼロ条」とは

約束・ペナルティを作る際に、必ず入れておきたい「おすすめ約束・ペナルティ」についても伺いました。

約束やペナルティは変更、追加されると必ず明記する

井上:約束・ペナルティを作る際は、必ず「今後、約束・ペナルティを変更、追加することもある」という条文を組み込みましょう。約束やペナルティの「第ゼロ条」みたいな存在ですね。
というのも、一度決めた約束やペナルティを変えることに、すごく心理的なハードルを感じられている親御さんが多いんですよね。

――確かに、「約束・ペナルティ」と聞くと、水をも漏らさぬ完璧なものを作らないと、と思いがちですね。

井上:ですが、子どもは約束やペナルティの抜け道を見つける天才です。だからこそ、「約束やペナルティは変更、追加していい」という項目は筆頭に入れておきたいですね。

約束やペナルティの「第ゼロ条」

ペナルティを緩める日も約束やペナルティに加えておく

――最近子どもががんばっているようだから、ペナルティを今日だけ緩める、といった対応はいかがでしょうか。

井上:基本的にはNGです。設定した約束やペナルティから親が逃げてしまうのは、全ての崩壊の発端です。ですが、そもそもの約束・ペナルティ上で、「中間・期末試験が終わった日はいくらでもゲーム・ネットOK」という、ご褒美デーみたいなものを明文化しておくのはアリですね。試験なら、一回きりのイベントでなく定期的に訪れるものですし。

――緩める条件も明文化しておく、というのがポイントですね。

約束・ペナルティを作るときに親側が覚えておきたいこと

約束・ペナルティを設定してもどうにも破られてしまう、うまくいかないというときに、親側がストレスをためないために知っておいた方がいいことを教えてもらいました。

約束・ペナルティは何度も何度も破られる

井上:約束・ペナルティは、子どもに何度も破られるということは覚えておきたいですね。例えば「22時すぎはゲームをしない」という約束を破りペナルティを受けたとしても、1週間後にまた同じことしているというのはいくらでもありえます。
「何回も何回も、同じことを言わなきゃいけない」ことは理解しておきたいですね。そうでないと「何回言っても無駄だ」と、親が折れてしまいますから。親側の忍耐力が必要になってくるところです。

「ゲームばっかりしないで勉強しなさい」が通じない理由

井上:そして、「ペナルティを与えたことで、最終的に親が望むような行動を子どもが取るとは限らない」という点も気をつけたいですね。
「ゲーム・スマホはほどほどにして勉強してほしい」と願う親御さんは多いですが、では利用時間に関する約束とペナルティを設定し、ゲーム・スマホの時間を減らすことはできたとしても、そこでできた時間で勉強するかといえば全く別の話です。
空いた時間で漫画を読んだり、友達の家に行ってゲームをしたりしている可能性もありますし、ゲームセンターに行くかもしれません。そこで「なんで勉強しないの!」と親子関係が悪化するのはお互い辛いことです。

――「ゲーム・ネットの時間を減らす」と「勉強する」は別モノだと思わないといけないですね。そんなにうまくはいかないと。

井上:はい。「勉強する目的」も大人になったらおのずと分かってくるものですが、どうしても子どもの場合、目の前の面白いことに飛びついて熱中してしまいますし、これはもう仕方がないです。

ゲーム・スマホの時間を減らすことはできたとしても、そこでできた時間で勉強するかといえば全く別の話です

こんなときどうする?約束・ペナルティにおける親子のしがらみ「あるある」

約束・ペナルティにおける親子の「あるある」なトラブル解消法を尋ねました。

「お父さん、お母さんは遅くまでゲーム・スマホしているじゃないか!」にどう答える?

――子ども側からの約束・ペナルティのよくある反論として、「自分のゲーム・スマホは21時までなのに、お父さんお母さんは遅くまでしていてズルい!」というのはよく聞きますね。

井上:話し合いが足りていないのかもしれません。「なぜ子どもだけが21時まで、と制限されているか」という本質を伝えないと、そういった反論が出てくると思うんですね。
「生活リズムを崩さないでほしい」というのが時間制限の背景にあると思います。大人は遅い時間にゲームやスマホをしていても、仕事や家事など自分のことをちゃんとしているけれど、ついつい熱中してしまう子どもは、それがまだ難しいということを伝えましょう。子ども側が納得していないと、そういった反論につながっていきます。

「没収」はメリットもデメリットも大きい劇薬

――ペナルティでよくある「ゲーム機・スマホ没収」はどうでしょうか。

井上:なんの約束を破ったかによりますね。課金のペナルティとしての没収は効くかもしれませんが、長時間利用のペナルティとしての没収だと、今一つかもしれません。
そもそも長時間利用を禁じるのは、ゲーム・スマホにどっぷりはまり込まずにバランスをとりながら生きていく力をつけていってほしいというのがあるはずですよね。その機会をある意味で奪ってしまうのが没収だと思います。
没収は楽ではあります。ただ長期目線で言うと、子どもが自分自身で何かを管理していく、優先順位をつけながらやっていくという力は、大人になってからもとても必要なものです。しかし、没収することでその機会を奪ってしまっているというのは、改めて覚えておかないといけないところです。

ペナルティvsご褒美、どっちが必要?

――ペナルティの一方で「ご褒美」もありますよね。どちらがいいのでしょうか?

井上:どちらがいいというより、ペナルティ、ご褒美、それぞれ必要ですね。 表裏一体の関係のように見えますけど、全くの別物です。
ただ、ご褒美にもポイントがあります。「何がご褒美になるかは、子どもによって違う」という点です。「お小遣いが上がること」「外食に行くとか、家族との時間が増えること」「よくやっているね!と承認されること、褒められること」、また「親が自分のことで喜んでいる、うれしそうにしていること」がご褒美になる子どももいます。
子どもがどんなご褒美に喜ぶかのポイントが分かっていないと、子どもが頑張っているからと親が外食に連れていってあげても、子どもは家で漫画読みたかった、みたいなことになってしまいますから。

――褒められる局面なのに、親子でズレがあってお互い微妙な空気になる、というのは勿体ないですよね。

とにもかくにも、すぐ褒める!

井上:また、ご褒美のタイミングも大事です。基本的には、約束守った直後に報酬がもらえると心に響きます。大人でも数日後に、「この間のあれ、よかったよ!」と言われても、「あーそうですか」となりますよね。しっかり約束守って、決めた時間にゲームをやめられたら、そこですぐ褒めてあげましょう。
お約束メイカー』で約束を作る際も「約束はいつでも変更、追加ができる」という、第ゼロ条を追加してみてもいいと思います。

とにもかくにも、すぐ褒める!
POINTまとめ
  • 約束・ペナルティは子ども自身に作らせた方がよい
  • 約束・ペナルティを変えていい、という「第ゼロ条」は必須
  • 「ゲーム機・スマホ没収」は楽なものの、デメリットもあり

POINTを意識して約束を作ってみる

この記事もオススメ子どもがゲームの約束を守らない原因とは?対策をご紹介!
子どものスマホ・ゲームの利用について親子で約束(ルール)を決めているご家庭は多いと思いますが、約束(ルール)が守れなかった時のペナルティについては決めているでしょうか?そしてそれはどんなペナルティでしょうか。保護者向けアンケートの結果をお伝えします。
石徹白 未亜インタビュアー/ライター
石徹白 未亜
いとしろ みあ。ライター。ネット依存だった経験を持ち、そこからどう折り合いをつけていったかを書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)として出版。ネット依存に関する講演を全国で行うほか、YouTube『節ネット、デジタルデトックスチャンネル』、Twitter(X)『デジタルデトックスbot』でデジタルデトックスの今日から始められるアイディアについても発信中。ホームページ いとしろ堂
twitter
facebook
LINE